67話 乳歯列期の反対咬合が観察でよい理由
「乳歯列期の反対咬合が観察でよい理由」
最初に結論を述べます。
それは「後でも治るから」です。
実際の症例で検証してみましょう。
【乳歯列期】
本症例は、乳歯列後期または混合歯列前期と言った方が正確かもしれません。
6才 女子
矯正相談のため来院、この時すでに反対咬合の程度はつよいですが、下顎の永久前歯が2本生えたばかりで、6才臼歯はまだ生えていません。
当面、定期的に観察することにしました。
6才の時の口腔内写真。
反対咬合です。
上顎は全て乳歯
下顎は永久前歯が2本生えた。
半年ごとに観察していきます。
【混合歯列期】
8才。
6才臼歯が生えそろいました。治療をはじめるにあたり、頭部X線規格写真などの資料を採ります。
検査資料を分析、診断、治療方針をたてます。
第一段階:顎の成長のコントロールによる反対咬合の改善
観 察:永久歯交換の誘導
第二段階:機能的咬合の確立
保 定:配列後の観察
【反対咬合の改善】
私は反対咬合の改善するとき、いつも3カ月以内の改善を目標にしていますが、
本症例では約12カ月を要しました。ともあれ、第一段階の目的は達成されました。
観察に移行します。
【観 察】
永久歯の生え変わり、全身と顎の成長状態、むし歯の有無など定期的に観察します。
【永久歯列】
17才
永久歯の大きさは適度なもので、歯列に凸凹は生じませんでした。
また、成長期を経ても、上顎骨と下顎骨は良好な関係が維持され、今後、反対咬合になる心配はないようです。したがって、第二段階治療の必要性はなさそうです。
本症例は6才の時に反対咬合のため来院しました。しかし、すぐ治療せず、6才臼歯が生えるまで観察しました。その後、タイミングをみて治療、改善しています。
従って、それより小さな年齢の乳歯列期で治療をはじめる意味を見出せません。
冒頭、「乳歯列期の反対咬合が観察でよい理由」は「後でも治るから」と言ったのは、この様な理由によります。
一方で、観察にすると歯科医院は、お金になりません。なんとか装置を入れようとする歯科医師がいても不思議ではありません。例えば、はやい方がいい、顎が狭い、今すぐ治さなければ大変なことになるなど、親の責任論を説き治療に誘導されたらどうでしょうか。
低年齢の矯正治療を急がせるような口調に騙されないようにしましょう。
【注 意】
本症例をまねて、8才になってからの受診でいいとは思わないで下さい。また、後でも治ると言っても限度があります。ある時期を過ぎると、急に治療が困難になります。
小学生になったら、矯正治療に明るい先生に相談することを勧めます。
医院選びの目安は、〇〇歯科医院より、〇〇矯正歯科医院の方が良いでしょう。