63話 複雑なものは単純にするといい
年齢が上がると歯の移動速度が遅いとか、治療期間が長くかかるとか、そんなことはありません。とくに矯正治療が難かしくなるわけではありません。ただ、差し歯やブリッジなどの補綴物(ほてつぶつ)があったり、歯周病になっている場合は、そちらへの対応が必要になることはあります。
私は基本的に年齢制限はないと考えています。
今回は、歯周病、補綴物、欠損歯という条件のある症例です。
【初診時】
女性。
人間は一人ひとり違うように、同じ診断はなく、治療方針も個々の症例で違います。
歯周病、補綴物、欠損部位などの条件をふまえて、その時点での最善の方法を考えます。
歯列の凸凹が顕著です。
抜歯部位、スペースの処理に工夫はしますが矯正治療をする上で、いつもとやることは変わりません。
【治療後】
動的治療期間は1年8ヶ月。
歯並び・咬み合わせは改善しました。色や形は、このあと修正すれば良いでしょう。
保定に移行します。
初診時の本症例は、歯列の凸凹が顕著で収拾がつかない状態でした。それを治すのが私の仕事です。
検査資料を読み解き、問題点を整理していきます。複雑を単純に、混乱を整頓へと導きます。
成人の矯正治療が、とりわけ難かしいわけではありません。むしろ術者の指示をきちんと守ってくれるのもこの世代であり、歯磨きが良好な点も治療に有利にはたらきます。
これまで矯正治療の機会がなかった方、今日がその機会です。
はじめるのに遅いということはありません。