61話 成人 開咬症例
奥歯は咬んでいるのに、前歯は咬んでいない、開いている。
不正咬合の一種で、開咬(かいこう)と言います。
程度の差はありますが、めずらしい症例ではありません。 子どもから大人まで、年齢に関係なく存在しますが、あなたは大丈夫ですか。
原因は種々ありますが、治療にあたっては正確な診断が必要です。
【初診時】
女性 34歳
検査・診断を経て、マルチブラッケト治療をはじめます。
普通にやって治る症例と普通にやっていては治らない症例があります。
本症例は後者です。難しい症例こそ、基本に忠実な治療が必要ですが、
テクニックのちょっとした匙加減が治療成績に影響するので、そのことを分かっていないと、こういう症例は治りません。
【治療後】
治りました。治療期間は16カ月。
矯正装置を付けても、自動的に歯並びは治っていきません。定期的に装置を調整します。また、症例によっては本人の協力が必要となります。本症例では、ある時期、顎間ゴム(矯正用の小さな輪ゴム)の使用を命じています。顎間ゴムは自分で取り外しが出来るぶん、使う使わないは本人にゆだねられます。指示どおり使って下さい。
近年、アンカースクリューが、よく使用されているようですが、基本的な知識と術式が不要になったわけではありません。当然、本症例では使用していません。
日本矯正歯科学会認定医は全国で約3,000人います。これは歯科医師全体の3%にすぎません。資格取得までのハードルが高いので、その道を志す歯科医師が少ないということの表れです。いっぽうで、セミナーなどを受講しただけの歯科医師が矯正治療をしているという現実があります。良質な矯正治療を受ける場合は、担当医が日本矯正歯科学会認定医であるか、同学会のホームページで確認することを勧めます。