35話 最小限の介入で効率よい治療。
歯や顎に機具を付けて、それらを移動させる。矯正治療は人間の体に介入するので、慎重な対応が必要です。術者は少しだけ手を施して軌道修正する。正常な成長発育にのったなら、あとは機具を外して、観察する。私は、最小限の介入で、効率よく治療するのが良いと考えています。
【初診時】
小学校3年生 男子
向かって左上2番が反対咬合になっています。この部位で、不良な接触があり歯に負担過重がかかっています。同時に、この部位のひっかりは、下顎を不用意に前方に誘導する原因になっています。
早期に解消する必要があります。
【第一段階】
反対咬合は改善し、歯の負担過重と下顎の前方誘導が解消され、正常な成長発育の軌道に乗りました。
後は定期的に歯の生え変わり、顎の成長などを観察していきます。
【観察中】
小学校5年生。だんだん、永久歯が生えてきました。
【永久歯の萌出】
高校1年生。全ての永久歯が生えました。
ここまで、特に問題なく経過しました。
永久歯の凸凹はなく、下顎の過度な成長もありませんでした。第二段階の治療の必要性はなく観察を終了しました。本症例は、初期に矯正装置を使用して正常な成長発育にのせ、あとは機具を外して観察してきました。装置を使ったのはわずかの期間です。
矯正歯科認定医はその症例がもつ特徴を把握しています。もう少し観察してもいいのか、来年には治療した方がいいのか、放置するとどうなるか、治療しなくてもいいのかなど予測が出来ます。一方で、無計画に装置を使用させて、結果的に治療効果がないか、あるいは悪くなったという例もあると聞きます。歯科医院選びは慎重にしてください。