34話 ちょっと反対咬合?、すごい反対咬合?
中学3年生の男子が歯並びを気にして来院されました。 矯正相談は保護者同伴で時間をかけて行います。相談者はこの時点で反対咬合の傾向があるので、私からは顎の成長発育に関する治療を提案しました。もちろん矯正治療をする・しないはご本人の判断なので、治療の押し売りはしません。ですから、相談だけで以後連絡のない場合も多々あります。
今回も、そのパターンでしたので、特に気にしていませんでした。
時が経過して、2年後に再相談に来られました。男子の反対咬合、伸び盛りです。今、どうなっているのか心配です。
【矯正相談時】
中学3年生 写真なし
【マルチブラケット開始時】
高校2年生、この症例はちょっと反対咬合なのか、すごい反対咬合なのか。あなたはどちらだと思いますか。
【頭部エックス線規格写真】
【プロフィログラム】
黒:平均値 赤:本人
上顎骨は平均的、下顎骨は著しく前下方に位置しています。
下顎の過成長による骨格的反対咬合症例です。
【マルチブラケット治療終了時】
術前の写真と比べてください。左右の写真で、犬歯の関係を見ると改善の程度が分かります。
本症例は下顎が大きく育ったことによる骨格的反対咬合です。
初診時の写真をもう一度見て下さい。前歯だけ見ると、それ程すごい反対咬合には見えません。ただし、骨格的反対咬合症例では、このような現象があるのです。
説明します。
①下顎骨が著しく突出してくる
②連動して、下顎前歯は上顎前歯から離れていく。
③このままでは、前歯どうしで咬めない。
④歯の傾斜角度で補償し始める。
⑤上顎前歯の外側傾斜、下顎前歯の内側傾斜。
⑥なんとか咬めるようになる。
骨格的なずれがある場合、歯の傾斜で補償され見かけ上、前歯は普通に見える、ということです。私はいつも言っています。反対咬合を甘くみてはいけません。反対咬合が怖いのは、全身成長とともに下顎骨が大きく育っていくことです。
今回の症例の身長をみてみましょう。
相 談:中学3年生の時 168㎝
再相談:高校2年生の時 174㎝
6㎝の伸びです。相談時の写真がないのが悔やまれますが当時より下顎骨は成長し、症状は悪化していると思います。ですから適切な時期に適切な治療が必要なのです。矯正治療単独で治せなくない場合は、大学病院で骨切り術など外科的に治療します。