31話 続・この症例を診断して下さい。
前回の「この症例を診断して下さい」とあわせて読むことを勧めます。そこでは、反対咬合のタイプにはいろいろある事、診断の重要性について説明しています。今回も、一緒に考えてみましょう。
初診時年齢 7歳
反対咬合です。
【初診時の頭部X線規格写真】 セファロ写真とも言う。
矯正歯科では必ず撮影します。診断の時に見せてもらいましょう。
頭部X線規格写真から算出した数値を読むには、訓練が必要なのでここでは省きます。
【初診時プロフィログラム】
青:平均値 赤:本人
図は同年齢の平均値と本人の重ね合わせです。診断は検査資料を総合的に判断します。この図だけで診断はしませんが、今日は特別です。あなたは、本症例をどのタイプの反対咬合と考えますか。
以下から一つ選んでください。
①歯性の反対咬合:歯の傾斜角度が、たまたま反対。
②骨格性の反対咬合:上顎骨・下顎骨、そのものが反対。
③機能的な反対咬合:一部の歯の接触を避け、顎を前に出す。
④これらが組み合わさったもの。
さて、成長期の反対咬合はどの様に治していくのかを説明します。
治療は二段階に分けて行います。
第一段階:反対咬合の改善
観 察:永久歯の生え変わり、顎の成長の観察
第二段階:永久歯の歯並びの改善
観 察:治療後の観察
反対咬合の治療時期はとても重要で、第一段階は成長期のうちに行います。小学校に入ってから治療時期を決めます。それ以前の低年齢から始める必要はありません。だからといって、小学生高学年まで放置するのはダメです。
先ほどの答えは ① です。したがって、歯にアプローチする装置で治します。
【反対咬合の改善】
「写真なし」
当医院の矯正治療症例は一症例ごとにファイリングしています。ただ、本症例の反対咬合の改善時の写真がありませんでした。撮影し忘れたものと思います、そういうこともたまにあります。
【第二段階開始前】
年齢 15才
永久歯が生えそろったので第二段階に移行します。この時点で、もう一度検査・診断をします。
本症例は非抜歯でマルチブラケット治療開始しました。
【第二段階終了時】
年齢 16歳
美しくて、機能的な歯並びの完成です。マルチブラケット装置は外しましたが、普段は保定装置(リテーナー)を装着して保定しています。
本症例は歯性の反対咬合でした。反対咬合が怖いのは、歯性の反対咬合であっても、全身成長に連動し下顎が大きくなり、骨格性反対咬合に移行する場合があることです。女子は小学生高学年頃、男子は中学校の頃です。身長が伸びる時期と一致します。ですから、その時期を迎える前に、矯正歯科認定医に診せておく必要があります。反対咬合をあまく見てはいけません。