19話 責任を果たす。
ブログでは口腔内写真だけの掲載ですが、矯正治療の診断は口の中だけ診て判断するものではありませんので、誤解のないようにしてください。検査資料は他にもありますが、あえて載せていません。
さて、成人の反対咬合症例です。次に示す写真を見るときは以下のことを考えながら見てください。
・どうやって治そうか。
・難しいのか、簡単なのか。
初診時口腔内写真
ここまでの写真を見てきてどう感じましたか。
「前歯が数本反対だけなので、それ程難しくないんじゃないか、その歯を傾斜させればOK 」という考え方もあるかもしれません。そこで、反対咬合の程度がどのくらいなのか、上下の歯列がどの程度ズレているのか、検証してみましょう。
写真を加工して、犬歯に青い線を入れました。
初診時 (犬歯に印付き)
上顎の犬歯に対し、下顎の犬歯がかなり前方にあります。
ちょっと視点を変えてみましょう。前歯の歯根相当部の歯肉の位置に注目してください。やはり下の歯肉が前方にあることがわかります。ブログには掲載していない、他のデータなどから判断して、本症例は骨格的反対咬合症例といえます。
通法に従い、検査・診断をします。下顎の第一小臼歯を抜歯が必要でした。
マルチブラケット治療を開始しました。
動的処置終了時の写真
加工した写真を使い(犬歯に青い線)、初診と術後を比べてみましょう。
初診と術後の比較
犬歯の関係が正しい状態になりました。これは下顎の第一小臼歯の抜歯スペース方向へ犬歯を移動させたことで達成されました。犬歯が後ろに移動した後に下顎の前歯を後退させて正しい咬み合わせをつくります。
冒頭、「前歯が数本反対だけなので、それ程難しくないんじゃないか、その歯を傾斜させればOK 」とありました。たとえ、上顎の前歯を傾斜させて見かけを上、歯列の反対がなくなったとします。しかしそれは全体の問題点を無視し(あるいは気がつかず)、安易な方法をとったと言えるでしょう。確かな医療を提供するのが私の責任の果たし方です。
矯正治療に関する正しい情報を普及するのも、わたしの責任です。
今後も、ブログやツイッターで情報を発信していきます。