43話 過剰と不足
矯正歯科に従事していると、過剰歯、欠損歯、癒合歯、埋伏歯、形態異常など、いろいろ経験します。問題は、個々の歯の形や数にとらわれるのではなく、口腔全体としてどう調和させて、美しく整え、機能するかを考えることです。今回は、そんなお話しです。
【初診時口腔内写真】
9歳 男子。上の前歯の凸凹を気にして、私のところに来院しました。
矯正相談を経て、治療を希望する場合は、検査へ進みます。
下顎歯列にマークを付けました。永久歯は数字、乳歯はアルファベットで示します。この時点では、向かって左の B が欠損(本人の右)、右の BC が癒合歯です。
治療方針
第一段階:上顎前歯の配列
観 察:側方歯交換の誘導
第二段階:機能的咬合の確立
保 定:配列後の観察
【第一段階】
前歯がととのいました。このあとは、観察に移行します。
【観 察】
歯の生え変わり、むし歯、顎の成長など定期的に観察します。
【永久歯の萌出】
全ての永久歯が生えそろいました。
上顎歯列は凸凹の程度がつよくなりました。下顎歯列では欠損です。
BC の癒合歯が抜けたあと、2番は生えてきません。両側2番の先天欠如です。1番の隣は3番(犬歯)です。上下の歯列の不調和の治療をはじめます。第二段階の目的は機能的咬合の確立です。
【保 定】
マルチブラケット治療が終了しました。動的治療期間は1年9ヶ月。
きれいな歯並び・咬み合わせの完成です。機能も向上しています。このあとは、むし歯の治療をしながら保定に移行します。
【初診と術後の比較】
初診時
改善時
初診時
改善時
初診時
改善時
過剰歯、欠損歯、癒合歯、埋伏歯、形態異常などがあると、心配になるのが人情です。このような症例を取り扱うにあたり重要なのは、現在の、個々の歯の形や数にとらわれるのではなく、将来、どう仕上げるか目標を立てることです。口腔全体として、美しく整えて調和させ機能するかを考えます。
矯正治療を施術するには、全体を見る視野が必要です。その場しのぎに、床矯正装置や拡大装置などを安易に使用しても何の解決にもなりません。