42話 二段階治療
ヒトの歯列は、乳歯列(期)→混合歯列(期)→永久歯列(期)と成長します。乳歯列期に不正咬合があったとしても、この時期は治療せず観察します。
乳歯列に隙間がないからといって、歯列拡大など早期に治療する必要はありません。
混合歯列期は、生え変わりの時期に相当します。子どもの矯正治療はこの時期から始めます。永久歯列になり、凸凹の程度によっては必要に応じ、本格矯正を始めます。
矯正治療は成長発育を考慮するため、治療時期を分けて行う場合があります。
今回は、ある一人の治療例を参考にして二段階治療(二期治療)について説明します。
本症例は3歳の時に、反対咬合を気にして矯正相談に来られました。(写真が無いのが残念です)
乳歯列の反対咬合ではありましたが、この時期の治療は必要性ありません。前歯部の生え変わりのときに受診するよう指示しました。
5年後、前歯の生え変わりに際し、凸凹を気にして再相談しました。
検査・診断を経て、治療方針をたてます。
第一段階:①上顎前歯の配列による機能的障害の除去
②反対咬合の改善
観 察:永久歯交換の誘導
第二段階:機能的咬合の確立
保 定:観察
【第一段階】
小学2年生 8歳 女子、混合歯列期の前半です。
凸凹や隙間がありますが、現時点で重要なのはそこではありません。
優先順位は反対咬合を治すことです。
反対咬合を放置する危険性についての説明は、ここでは省きます(過去記事参照)。
6カ月の写真
反対咬合は改善されました。
上顎の二番目の歯が斜めのままですが、反対咬合になっていないのでこの時点では良しとします。
後で治します。第一段階の目的は達成されました。このあとは観察に移行します。
【観 察】
混合歯列期間は歯の生え変わり、むし歯、顎の成長など定期的に観察します。永久歯が生えるにしたがって歯列の凸凹がつよくなりますが、想定内です。
【第二段階】
中学1年生、12歳。永久歯列になりました。
この時点で、検査・診断をします。
マルチブラケット治療を始めます。
【保 定】
写真はマルチブラケット治療終了時。動的治療期間は1年7ヶ月。撮影のため保定装置は外していますが、普段は装着して保定しています。
歯並びの悪いときは、不均衡な状態にあり、本来の機能は発揮されず、効率が低下しています。矯正治療では、不均衡を均衡へと修正します。きれいになっていくに従って機能も上がってきます。このことは、矯正治療の目的でもあります。
第二段階の方針は、「機能的咬合の確立」でした。
美しいものは機能的であり、機能的なものは美しい。私はそう考えます。
さて、本症例は二段階治療を必要としましたが、永久歯列に凸凹がない場合、二段階目の治療をしないことがあります。過去記事「最小限の介入で、効率の良い治療」がこれに相当します。ご参照ください。