21話 子どもの反対咬合
反対咬合の治療時期は、早ければいいというものではありません、しかし、遅いのも困ります。適切な時期がありますので、矯正歯科認定医に相談してください。ひとつだけ覚えてほしいことがあります。それは、小学校の高学年になると背が大きくなるのにともなって、下顎も増大する傾向がある。という点です。放置することのないように周囲の大人は気をつけてください。
さて、今回の症例は小児期の反対咬合です。
女子、初診時年齢 9才。通法に従い、検査・診断をします。
この症例の全体像は「下顎の大きさが大きいのに加え、上顎の前歯が内側に傾斜して反対咬合になっている状態でした。
初診時口腔内写真 (小学3年生)
治療の原則は、原因にアプローチすることです。
この症例が反対咬合である原因は。「下顎の大きさが大きいのに加え、上顎の前歯が内側に傾斜して反対咬合になっている」ことでした。したがって、下顎の成長を抑え、上顎の前歯を傾斜させれば治ります。
次に示す写真では、反対咬合が治った段階で、前歯に隙間がありますがまったく問題ありません。他の永久歯の生えるのを待ち観察します。
第一段階:咬み合わせの改善時 (2か月後)
一般的に反対咬合の治療計画は、途中の観察期間を挟んで二段階に分けて行います。
第一段階
時期:おおむね、小学生の成長期
歯:混合歯列期
目的:反対咬合の改善
観 察
永久歯交換の誘導、必要に応じ顎の成長のコントロール
第二段階
時期:おおむね、中学生以降の成長安定期
歯:永久歯列期
目的:機能的咬合の確立
尚、この症例は第二段階は行いませんでした。
次に示す写真は、観察期間後期の永久歯が全て生えた時のものです。
永久歯萌出時 (中学1年生)
この症例は反対咬合を改善した後の永久歯交換と顎の成長が問題なく進行しました。歯並び・咬み合わせは良好な状態を得ることができました。したがって、マルチブラケット治療の必要はありませんでした。ただし、全ての症例が第二段階を回避するわけではありません。二段階治療が基本となります。
繰り返しになりますが、重要なことなので確認します。
子どもの反対咬合の注意点
・適切な治療時期がある。
・成長に伴い、悪くなる可能性がある。
放置することのないように、周囲の大人は気をつけてください。